「ひろしま『かがり灯』の祭典」が開催されるに当たり、メッセージをお送りいたします。
79年前、広島に投下された一発の原子爆弾によって、街は一瞬にして破壊し尽くされ、多くの尊い命が奪われました。
そして、辛うじて生き残った人々も、心身に悪影
響を及ぼす放射線により、今なお生活面で様々な苦しみを抱えています。
昨年5月のG7広島サミットでは、各国首脳の平和記念資料館視察や被爆者との対話が実現し、こうした被爆の実相に直接触れていただいた上で、それぞれの平和への思 いを芳名録に残されました。
また、慰霊碑参拝の際には、私から直接、各国首脳に碑文について説明する機会があり、碑文に込められた思い、すなわち、 過去の悲しみに耐え、憎しみを乗り越えて、全人類の共存と繁栄を願い、真の世界平和を祈念する「ヒロシマの心」をしっかりと受け止めていただいたところです。
しかしながら、現下の世界情勢をみると、ウクライナでの戦争は長期化し、中東情勢は混迷を極め、罪のない多くの市民が犠牲になっています。
また、多くの為政者が核
抑止力拡大の必要性を謳い、世論もそれに理解を示す傾向が見られるなど、これまで長年被爆地が訴え続けてきた平和への願いに逆行するような事態が続いています。
このため、市民社会においては、一人一人が、被爆者の「こんな 思いは他の誰にもさせてはならない」というメッセージに込められた人類愛や寛容の精神を共有するととも に、個人の尊厳や安全が損なわれない平和な世界の実現に向け、為政者に核抑止論から脱却を促すことがますます重要になっています。
そのためには、例えば、私たちが日常生活の中で言葉や国籍、信条や性別を超えて感動を分かち合える音楽や美術、スポーツなどに接し、あるいは参加して「夢や希望が ある」といった気持ちになれるような社会環境を整えることが重要となります。
そうした意味で、本年も皆様が「ひろしま『かがり灯』の祭典」を開催され、祈りや夢を記した願い札を焚き上げる「かがり灯」の下に集い、 共に音楽に親しみ、平和への思いを一つにされることは誠に意義深く、その取組に対し深く敬意を表します。
本市は、8,400を超える平和首長会議の加盟都市と共に、市民レベルでの交流を通して「平和文化」を世界中に広めます。
そして、平和を願う私たちの総意が為政者の心に届き、武力によらず平和を維持する国際社会が実現する環境を創ることを目指しています。
皆様には、核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現に向け、共に力を尽くし行動してくださることを心から期待しています。
終わりに、「ひろしま『かがり灯 』の祭典」の御成功と御参会の皆様の今後ますますの御健勝と御多幸を心よりお祈りいたします。
令和6年(2024年)8月5日
広島市長 松 井 一 實